=高校生のためのグアム観光学=

素材提供:グアム政府観光局


<CONTENTS>

1)海外修学旅行の価値

2)グアムと日本の関係史

3)サステナブルツーリズム/SDGsを学ぶ

4)ピースツーリズム/戦後80年に学ぶ

5)エスニックツーリズム/先住民文化に学ぶ


1)海外修学旅行の価値

●経済的逆風下で海外体験を持つ意味

 

今日、海外修学旅行は単なる観光旅行ではなく生徒の将来に資する教育プログラムとして位置づけられており、「社会課題解決」「異文化理解」「ウェルビーイング」といった次世代のリーダー育成に不可欠な資質を育むための重要な機会で考えられます。残念ながら円安やインフレによる海外旅行のコスト増大という逆風がありますが、グローバル化が加速する現代において高校生が国際的な視野や異文化適応能力、主体性を養う「機会価値」は相対的に高まっていると言えます。海外体験を通じて得られる課題解決能力や自己肯定感は生徒の将来に良い影響を与えることは間違いなく、以下の背景を持つグアムへの教育旅行は費用対効果に優れた選択肢として注目を集めています。

 

●グアムが提供する費用対効果

 

グアムは日本から直行便でわずか約3時間半で最も近い英語圏であるという地理的優位性を持っています 。この近接性は旅行費用を抑えることができるだけでなく、限られた修学旅行の日程において現地での滞在時間を最大限に確保できるという時間的効率性をもたらします 。時差もわずか1時間であるため、生徒の身体的な負担が少なく到着後すぐに学習プログラムに集中できるというメリットがあります 。これは、従来の長距離移動を伴う海外旅行で初日と最終日に発生していた「移動日」を実質的な「学習日」に変えることを可能にします。その結果、短期間でも内容の濃い教育的付加価値の高いプログラムを組むことができ、保護者や学校側の費用対効果への懸念を払拭する強力な根拠となります。

 

●安全性と円滑な実施環境

 

教育旅行の実施において生徒の安全は最優先事項ですが、グアムは非常に優れた環境を提供可能です 。経験豊富な日本人スタッフが多く、観光客向けのサポート体制が充実しており、24時間日本語で旅行中のトラブルに対応する「マイクロネシア・アシスタンス・インク(MAI)」や、日本人医師が常駐する「グアム旅行者クリニック」が整備されていることは、学校や保護者にとって大きな安心材料です。これらのサポート体制は万が一の事態への迅速な対応を保証するだけでなく、引率教員が安心してプログラムに専念できる心理的な基盤提供となっています。

 

2)日本とグアムの関係史

●地理的・歴史的関係

 

グアムはアメリカ合衆国の自治属領(準州)で、日本に最も近いアメリカという地理的ポジションにあります。また、総面積が東京23区の約84%というコンパクトな島であることから、そのサイズ感をイメージし易いと思われます。現在はアメリカ合衆国に属するグアムですが、その歴史的には極めて多様性に富んでて、4000年以上前に東南アジアから渡来したとされる先住民チャモロ人が築いた独自文化をベースに、スペインからアメリカを経て日本が統治した時代もあることから歴史的にも日本とは深い関係があります。

 

●太平洋戦争と戦後の関係

 

戦時中の占領から復興を遂げた日本が半世紀以上にわたって海外旅行の目的地として友好関係を深めてきたグアムと日本の関係を学ぶことは、戦後80年という節目を迎える今、平和学習の現場体験として重要な意味を持ちます。

 


 

グアムを学べば日本と世界が見えてくる…

ここからは探究学習フィールドとしてのグアムの魅力を3つのテーマで解説します。

 

3)サステナブルツーリズム/SDGsを学ぶ

グアムは、SDGsを実践的に学ぶための理想的なフィールドです 。観光地としての発展と、豊かな自然・文化の保全を両立させる取り組みは、SDGsの理念を現実の行動として体験する機会を提供します 

 

海洋環境保全と実践

 

グアムのサステナブル・ツーリズムは美しい海を守る活動に焦点を当てています。ビーチクリーニングやサンゴ礁保全といったプログラムに参加することで、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」を実践的に学ぶことができます 。これらの活動は、単なるボランティア活動に留まらず観光が環境に与える影響とその保全のために個人ができる貢献を肌で感じる機会となります 。また、ツアー参加費の一部が環境保護団体に寄付されるプログラムもあり、観光が持続可能な社会にどう貢献しうるかを学ぶことができます 。

 

●ローカル社会との共生

 

グアムの文化に深く根ざしたお祭り「フィエスタ」への参加は、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の実践的な学習となります 。このイベントでは地元住民が観光客にも料理を振る舞い、音楽やダンスを通じて自然な交流が生まれます 。参加者は交流を通じて、観光が地域文化の保全やコミュニティの活性化にどのように貢献しうるかを体感することができ、文化人類学や地域経済といった視点からサステナビリティを多角的に捉えることを可能にします。

 

持続可能な開発目標の体験的学習

 

グアムではローカルフードが集まる「デデドの朝市」や、水耕栽培でレタスを生産する農場の見学も可能です 。これらのプログラムは、SDGs目標2「飢餓をゼロに」や12「つくる責任、つかう責任」に直結しており、食の生産と消費の現場を見ることでグローバルな食料システムとローカルな持続可能性の関連性を学びます。地産地消の取り組みを学ぶことは日々の生活における消費行動を見つめ直すきっかけとなり、より意識の高い消費者としての視点を養うことが可能です。

 

 

4)ピースツーリズム/戦後80年に学ぶ

 

戦争の足跡を訪ねる

 

グアムは第二次世界大戦中に日本軍が一時的に占領した歴史を持ち、戦争の悲惨さと平和の尊さを深く学ぶことができる場所です 。南太平洋戦没者慰霊公苑は象徴的な場所であり、旧日本軍の司令部跡地に建てられた慰霊碑は、この地で命を落とした50万人もの戦没者を追悼しています 。苑内にはかつての司令部の足跡や日本兵の遺品を集めた「平和の折りの家」が残り、教科書だけでは得られない戦争のリアルな現場に触れることができます 。

また、ガアンポイントやアサン展望台といった激戦地跡を訪れることは、美しい景色の裏にある戦争の歴史を肌で感じる機会となります 。現地ガイドから直接話を聞くことで歴史を多角的に捉え、戦争がもたらした悲劇や苦しみを具体的に想像する力を養います 。これは抽象的な平和教育を感情を伴う具体的な「追体験」へと昇華させる精神的価値を持つ学習です。

 

平和の尊さを肌で感じる

 

2025年という戦後80年の節目を機にグアムで行う平和学習は、単なる歴史見学と振り返りにとどまりません。日本からわずか約3時間半の場所で起きた歴史的事実を学ぶことで、戦争が遠い場所の出来事ではなく身近な問題であることを認識可能です 。この経験は平和の尊さを「自分ごと」として捉え、未来に向けて平和を構築する想像力を育む重要な原体験となるはずです。

グアムでの平和学習は、日本という国家の被害者と加害者の日本の両側面を客観視する場でもあり、関連施設や遺品等を通じて真の国際理解やグローバルな視点と倫理観を形成する上で極めて重要な機会となります。

 

 

5)エスニックツーリズム/先住民文化に学ぶ

 

古代チャモロ文化の探究

 

グアムは約4000年前に東南アジアから渡来したチャモロ人によって形成された独自の文化が色濃く残る場所です 。古代チャモロ人は優れた漁師や職人で特に強い母系社会を形成していたことが知られており、女性の力や社会的地位によって言語や伝統、舞踊の大部分が守り伝えられてきました 。古代チャモロの遺跡「ラッテストーン公園」はその文化を象徴する場所で、高さ1.5〜2メートルの石柱は、高床式住居の土台とも言われ、未解明な謎の部分も多い遺跡を訪れることは古代文明の神秘に触れる貴重な機会になります 。

 

伝統文化の体験プログラム

 

グアムでは伝統文化を五感で体験できるプログラムが豊富に用意されています 。伝統料理「チャモロ料理」は、ココナッツや赤唐辛子を使い、「甘さ・辛さ・酸っぱさ」が特徴で、グアム・コミュニティ・カレッジでの料理教室で調理法を学ぶことができます 。また、創造神や自然をテーマにしたダイナミックな「アンシェント・チャモロ」ダンスや、恋愛をテーマにした「スパニッシュ」ダンスの鑑賞や体験は、チャモロ文化の精神性を感じ取る機会となります 。フィッシュアイマリンパークでのココナッツ体験や、バレー・オブ・ザ・ラッテ・アドベンチャーパークでのリバークルーズは、ヤシの葉細工や火起こしといった伝統技術を学ぶ機会が提供され、文化を支える知恵や自然との共生を深く理解することができます 。

 

異文化理解を深める交流の場

 

毎週水曜日に開催される「チャモロビレッジのナイトマーケット」は地元の食文化や伝統文化が凝縮された場所で地元住民と観光客が自然に交流するハブとなっています 。このマーケットでの販売実習は、生徒が英語を現実のコミュニケーションツールとして使う実践的な機会を提供し、異文化環境で積極的に挑戦する自信を育みます 。このような交流の場は単なる知識の習得を超えて文化の多様性を尊重し、グローバルな視点から文化継承の意義を考えるきっかけとなります。

 

 

 

海外修学旅行における探究学習は、単に相手国の歴史スポットを訪問するだけにとどまらず、その歴史・文化、自然を体系的・構造的に学ぶことで価値が高まります。
「グアム観光学」を参考に高校生の多感な時期に「世界を観る力」の獲得を検討してください。